何事にも｢始めて｣の時はある

俺だってもちろんジンを｢始めて｣飲んだ時だってあるし
ビールだって｢始めて｣飲んだときは酔っ払った

その時はちょっと学生服を着てた様な気もするけど
もう時効と言う事で気にしない方向で行く

だけど大抵｢始めて｣の時は印象があやふやで
大して まともに覚えていない

そりゃそうだ・一回で全体が見通せるほど酒は簡単なものじゃない

だけどあの｢始めて｣は一回で75.5％くらい見渡せた気がする…

 

年下の友達に誘われて入ったBar
聞くとその友達も入った事がなかったらしい
ちょっとお洒落なその店にいつ入ろうか迷っていたところ
俺の様な酒好きがたまたま隣にいたので入ってみることにしたそうだ

でもまだ俺は酒は好きだが種類なんて何も分かっていなかった

ジンはジントニックの原料で・ウィスキーは琥珀色
バーボンとはちょっと違うな〜くらいしか分かっていなかった

だから何にしようか非常に迷っていた
その店はボトルの数が半端なかったのだ

その時に友達が｢あ！あれにしましょう！｣と声を掛ける

赤と黄色のラベルでいかにも暑そうなイメージだ

｢レモンハートってラムなんすよ！俺大好きなんす！」

れもんはーと？

なんかエロマンガのタイトルみたいな名前だなぁ…

ラム？聞いたことあるけどなんだそりゃ？

どっかのマンガの主人公の女の子みたいな名前だなぁ…

大体１５１って数字はなんの数字だ？高いんじゃないのか？

 

 

勝手に不安になっているところにグラスが運ばれてくる
どうやらロックで頼んだようだ
濃い目の琥珀色がライトの光で揺れている

｢これ・・・とにかく飲んでくださいよ！｣

友達が嬉しそうに薦めてくる
言われなくても酒なら飲むさ！
強気に乾杯をしたあとにくいっと煽る

 

…んげっ！？なんだこりゃぁ！？

 

口当たりはまろやかでほんのり甘め
ものすごく好きな味だ
でもなんだ！？

この後からゴゥッと来る灼熱の嵐は！？

 

｢実はこれって75度くらいあるんですよwどうですか？｣

 

どうですかじゃない！しっかりゴクッと飲んでしまった！
ぐはっ！１杯目からこれかよ！

そしてその日はグデグデに酔っ払って道端でぶっ倒れることになる

 

結局後で知った事だが151と言うのはプルーフの事で
アルコール度数を表す数字だった

プルーフは大体度数×２の数値
つまり151プルーフとは75.5度の酒だということだ

そんなものをいきなりゴクッと飲んでしまっては潰れるのも当たり前だ

 

だが・なぜか俺はこの酒がとても気に入った

 

　こちらはホワイトのレモンハート

 

その友達と言うのが一緒にボクシングを習っていたので負けたくないと言う気持ちもあったと思う

全く関係ない張り合い方だが
格闘技なんかやってる奴はみんなそんなもんだ

それから飲み続けるうちにその甘さとコク・そしてパンチの効いたキックバックに喜びを覚えるようになる

 

気が付いたら他のラムもグビグビ飲む酒好きになっていたが
その時から一番好きなラムと言えばこのレモンハートだ

飲むたびにあいつに貰ったパンチの味も思い出す
くわっ！やっぱり強いなぁ！